南米ではお菓子に警告マークが付く。では付かないクッキーは作れるのだろうか

 


南米ではお菓子に警告マークが付く。では付かないクッキーは作れるのだろうか


最近、南米を中心に砂糖や超加工食品への規制が進んでいることを知りました。
国によっては、お菓子や飲み物に警告マークが付きます。


「糖分が多いですよ」
「塩分が多いですよ」


「脂肪が多いですよ」
そんなことを一目で分かるようにする制度です。
最初は、
「へぇ、そんなことをやっている国があるんだ」
くらいの感覚でした。
でも調べているうちに、だんだん面白くなってきました。
そこで一つの疑問が浮かびます。
その基準をクリアするお菓子は作れるのだろうか。
しかも、おいしく。

ただ砂糖を減らしただけのお菓子ではなく、
「もう一枚食べたいな」
と思えるようなお菓子は作れるのだろうか。

ここで、「フライパン屋なのに、なぜクッキーなの?」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かにクッキーはオーブン料理です。
でも私たちはこれまで鉄フライパンを通して、ずっと「焼く」ということを考えてきました。
焼くことで肉はどう変わるのか。
野菜はどう変わるのか。
香りはどう変わるのか。
そして味はどう変わるのか。
そんなことをずっと見てきました。

今回やろうとしていることも実は同じです。

この南米の食品規制をきっかけに、
砂糖や超加工食品に頼り過ぎなくても満足感のあるお菓子は作れるのだろうか。

そんな実験を始めてみることにしました。
今回はその第一回。
オートミールクッキーです。

 

オートミールクッキーを作ろうと思った理由


このクッキー、最初から今の形だったわけではありません。
まずオートミールを粉にするところから始まりました。
すり鉢も試しました。

でも100グラム、200グラムと使うとなると現実的ではありません。
いろいろ試した結果、家庭用ミキサーで砕くのが一番続けやすい方法でした。
ただし小麦粉のような細かい粉にはなりません。
少し粒が残るくらいです。
でも私はそれで十分だと思っています。
家庭で無理なく作れることも大切だからです。


最初はオートミールに米粉と米油を加えたシンプルなクッキーでした。
ところが食べているうちに気付いたことがあります。

私は知らないうちに、
「オートミールを何か別のものにしよう」
としていたのです。
でも途中から考え方が変わりました。
オートミールにはオートミールのおいしさがある。
だったら、その良さを伸ばした方が面白いのではないか。


そう思うようになりました。
そこで黒ごまを入れてみました。
次に白ごまも入れてみました。
さらにコーンスターチを入れてみました。
きなこも入れてみました。
そして最後に、ざらめと塩。
こうして今の形にたどり着きました。



今回のレシピ


・オートミール 100g
・米粉 大さじ2
・コーンスターチ 大さじ2
・きなこ 大さじ2
・米油 大さじ2
・水 大さじ5
・黒ごま 小さじ2
・白ごま 小さじ1
・ざらめ 10g
・塩 1〜2g

 

出来上がったクッキーはどんな味だったか


食べてまず感じたのは、
一般的なクッキーとは少し違うということでした。
サクサクというより、
どちらかというと
「パリッ」
という感じです。
薄焼きせんべいほど硬くはありません。

でも一般的なバタークッキーとも違います。
オートミールだけで作っていた頃は、少し湿ったような印象が残っていました。
ところがコーンスターチを加えることで、その印象がかなり変わりました。
そして今回面白かったのは香ばしさです。
最初は黒ごまを増やせば増やすほどおいしくなると思っていました。


ところが実際は違いました。
いろいろ試しているうちに、
黒ごまは白ごまと組み合わせた方が引き立つ。
そんな印象を持つようになりました。
黒ごまだけではなく、白ごまが入ることで逆に黒ごまの存在感が際立つのです。
さらにそこへきなこを加えると、香ばしさにもう一段奥行きが出ました。
黒ごま。
白ごま。
きなこ。
それぞれが別々に主張するのではなく、重なり合うような感じです。


でも今回、一番面白かったのは甘さでした。
南米の食品規制を意識すると、砂糖をたくさん使うわけにはいきません。
そこで最初は甜菜糖を使っていました。
ところが思ったほど満足感が出ません。


そこで考え方を変えてみました。
甘さを全体に均一に広げるのではなく、
局所的に甘さを作ったらどうだろう。
そう考えて使ったのがざらめでした。
すると結果は予想以上です。
全体はそれほど甘くありません。
でも食べている途中で、
「あ、甘い」
と感じる場所があります。
砂糖の量は少ないのに、甘さの印象はしっかり残るのです。


そしてもう一つ試したのが塩でした。
日本ではお汁粉に少し塩を入れたり、きなこに砂糖と一緒に塩を加えたりします。
塩味を強くしたいわけではありません。
甘さを引き立てるためです。


今回のクッキーも同じ考え方でした。
砂糖を増やしたわけではありません。
でも塩が少し入ることで、ざらめの甘さがより感じやすくなります。
作りながら、
「人間は砂糖の量だけで甘さを感じているわけではないんだな」
と改めて思いました。

香り。
食感。
甘さへの期待。
そういったものが全部重なって、おいしさになるのでしょう。
結果として家族の評価はかなり良いものでした。
砂糖を減らしたから我慢して食べるクッキーではありません。
ごまの香ばしさ。
きなこの香ばしさ。
オートミールの風味。
そして時々やってくるざらめの甘さ。
それぞれが組み合わさって、一つのクッキーになったように感じています。

 

南米規制チャレンジ No.1


このクッキーは各国の制度をクリアできるのだろうか
今回のクッキーは南米の食品規制をきっかけに作り始めたものです。
そこで実際に各国の制度と比べてみました。
もちろん正確には分析機関で測定しなければ分かりません。
ここではレシピから計算した概算値として見ています。
ペルー
ペルーでは100gあたり、
・糖類 10g以上
・ナトリウム 500mg以上
・飽和脂肪 4g以上
になると警告表示の対象になります。
今回のクッキーは糖類が約4〜5g程度、ナトリウムも基準を大きく下回る見込みです。
そのため、現在のレシピなら比較的余裕を持って基準を下回る可能性があります。
評価:★★★★★


チリ
チリは世界でも有名な警告表示制度を持っています。
糖類10g超。
ナトリウム400mg超。
飽和脂肪4g超。
さらにカロリー基準もあります。
今回のクッキーは糖分と塩分については十分余裕があります。
評価:★★★★★


メキシコ
メキシコでは高糖分、高塩分、高カロリー食品への警告表示があります。
また人工甘味料を使用した場合には子ども向けの注意表示も必要になります。
今回のクッキーは人工甘味料を使用していません。
評価:★★★★★


コロンビア
コロンビアは少し特徴があります。
警告表示だけではなく、超加工食品への課税も進んでいます。
今回のクッキーは、
ショートニングなし。
乳化剤なし。
香料なし。
着色料なし。
比較的シンプルな材料で構成されています。
評価:★★★★☆


アルゼンチン
アルゼンチンも高糖分、高塩分、高脂肪食品への警告制度があります。
今回のクッキーはその基準を下回る可能性が高い内容です。
評価:★★★★★


ブラジル
ブラジルはNOVA分類という考え方を重視しています。
糖分だけではなく、
どれだけ加工されているか。
どれだけ添加物が使われているか。
を見ます。
今回のクッキーは比較的シンプルな構成ですが、今後さらに研究の余地がありそうです。
評価:★★★★☆

 



南米規制チャレンジ評価表
糖分      ★★★★★
塩分      ★★★★☆
飽和脂肪    ★★★★★
超加工食品度  ★★★★☆
原材料のシンプルさ ★★★★☆
家族評価    ★★★★★
再現性     ★★★★★


最後に簡単な作り方


まずオートミールを家庭用ミキサーで粗めに粉砕します。
次に、
オートミール
米粉
コーンスターチ
きなこ
黒ごま
白ごま

米油

を混ぜて生地を作ります。
生地がまとまったら小分けにして形を整えます。
そして表面にざらめをパラパラと振りかけます。
さらに塩もほんの少しだけ振ります。
これは日本のお汁粉やきなこに少量の塩を加えて甘さを引き立てる考え方を応用したものです。
その後、コンベクションオーブンで焼きます。
温度は180℃。
焼き時間は約25分です。
焼き上がりはサクサクというより、どちらかというとパリッとした食感になります。

 

食を考えることは、自分を考えること

南米の食品規制を調べ始めた時は、
正直なところ、
「遠い国の話だな」
くらいにしか思っていませんでした。
でも実際にクッキーを作りながら考えてみると、見えてきたのは規制そのものではありませんでした。


どんな甘さなら満足するのか。
どんな香りが心地よいのか。
どんな食感ならもう一枚食べたくなるのか。
そんなことを考えているうちに、
食を考えることは、自分を考えることなのかもしれない。

つまりは、食事は明日の自分の体を作っていることだし、未来の自分の体を作っているんですね


私たちは鉄フライパンを販売しています。
でも本当にお伝えしたいのは、道具そのものだけではありません。
毎日の食事は明日のエネルギーになります。
そして明日の体を作ります。

だからこそ、
どんな食材を選ぶのか。
どんなふうに調理するのか。
どんな味を目指すのか。
そういったことを考える時間も大切だと思っています。
今回のオートミールクッキーも、その延長線上にある実験でした。
ざらめをもう少し減らしたらどうなるだろう。
ごまの割合を変えたらどうなるだろう。

そんなことを考えていたら、また試してみたいことが増えてしまいました。
どうやら、この実験はまだしばらく続きそうです。