年末年始になると、やっぱりおせち料理を食べる機会が増えますよね。
「お正月といえばおせち」
この言葉、なんだか当たり前みたいに思っているけど、よく考えると、これっていい文化だなあと思ったりします。
でもね、あるときふと思ったんです。
昔の人も、私たちと同じようなおせちを見ながら、
「正月だねえ」なんて言って過ごしていたのかな、って。
実は、これがちょっと違いそうです。
おせち料理自体は昔からありますが、今みたいに重箱にきれいに詰めたおせちが庶民の家に広まったのは、江戸時代の後半から明治・大正くらい。
思っているより、そんなに大昔から同じ形だったわけじゃないんです。
しかも、見た目も今とはだいぶ違っていたはずなんです。その一番の理由が
「甘み」 ☆彡
今のおせちって、白砂糖(上白糖)を使った、明るくてつやっとした料理が多いです。
でも江戸時代から明治のはじめ頃まで庶民の台所でよく使われていた甘みは、黒砂糖・麦芽糖(水飴)・みりんだったんです。
その中で主力として使うのは砂糖=黒砂糖。
しかも黒砂糖も、今みたいにサラサラじゃなくて、塊を溶かして使うのが普通。
だから、煮るとか、絡めるとか、照りを出すとか、
そのあたりの感覚が、今とは少し違っていたのか。。。。
ちょっと想像してみてください。
もし、今のおせちを白砂糖じゃなくて黒砂糖で作ったら・・・・・・
たとえば黒豆。
今はつやっとして、どこか透明感がありますよね。
これを黒砂糖で煮ると、もっと色が深くなって、少し茶色がかった黒になります。
甘さも、パッと甘いというより、じんわり重なる感じ。この感じを日本的に敢えて言ったら憲法色って言うのはどうです?
煮しめもそうです。
白砂糖だと明るい茶色ですが、
黒砂糖を使うと、里芋やごぼうの表面がもう一段濃い色になって、
「ああ、ちゃんと煮含めたなあ」って雰囲気になる。この感じを日本的に言ったら利休茶色でどうでしょう?
田作りは、
黒砂糖を使うと少し黒みを帯びた艶になって、
香ばしさがぐっと前に出ます。日本的に言ったら黒褐色です
昆布巻きも、
全体が落ち着いた黒褐色になって、
見た目からして「保存食だなあ」という感じ。この感じは濃墨
栗きんとんも、
今の鮮やかな黄色とは違って、
もっと渋くて、茶色寄りの色だったはずです。これは朽葉色でどうでしょう
こうして並べてみると、
昔の庶民のおせちって、
全体的にもう少し暗くて、落ち着いた色合いだったんだろうな、
って自然に想像できます。
でもそれは、地味だったという話じゃありません。
当時の甘みは、ただ甘くするためじゃなくて、
味をまとめたり、日持ちをよくしたり、少ない量でも満足できるようにするためのもの。
黒砂糖、麦芽糖、みりんをうまく使い分けながら、何日も食べられるように考えられた料理が、おせちだったんですね。
そう思うと、おせちって
「昔から変わらない伝統料理」というより、
その時代その時代の台所の工夫が、そのまま残ってきた料理
なのかもしれません。
今年のお正月、
重箱を開きながら、
「これ、黒砂糖で作ったらどんな色になるんだろうね」
なんて話してみるのも、案外楽しいと思います。
このあとご紹介するレシピは、
そんな昔の甘みの使い方を、
今の台所で無理なく楽しむためのものです。
黒砂糖を溶かして、少しずつ味を見ながら作る――
それって実は、
昔の庶民の台所に、いちばん近い作り方なのかもしれません。











