鉄フライパンで米粉クッキーを焼いたら、油で固くなった理由をちゃんと考えてみた
鉄フライパンでクッキーを焼いてみたんです。
しかも今回は、ちょっと実験も兼ねて、米粉を使ってみました。
やり方はシンプルで、鉄フライパンに網を敷いて、生地を置いて、蓋をして焼く。
こうすると中が対流して、ちょっとしたオーブンみたいな状態になるんです。
温度も体感的には170度前後まではちゃんと上がっている感じがあって、焼き菓子としては十分な環境が作れます。
普段から使っている鉄フライパンだし、火加減もだいたい分かっている。
正直、「まあ、普通に焼けるだろうな」くらいの感覚でした。
で、
最初にやったのは、バターを使わずに米油を入れた生地。
焼き上がって、少し冷まして、食べた瞬間に、
「あれ?」って思ったんです。
見た目は悪くない。ちゃんと焼き色もついている。
でも、噛んでみると、固い。
サクッというより、ガリッ。
クッキーというより、かなり歯応えのある焼き菓子。
正直、前歯がちょっと心配になる感じです。
完全に焦げているわけでもないし、火が強すぎたわけでもなさそう。
鉄フライパンでありがちな「火が入りすぎた」という感じでもない。
それなのに、頭の中にあった「クッキーの食感」とは、どうも違う。
正直、「これ、クッキー?」と思うくらいでした。
そこで、次は条件をまったく変えずに、油だけをバターに替えて焼いてみました。
鉄フライパンも同じ。
米粉も同じ。
焼き方も同じ。
違うのは、油が米油か、バターか、それだけ。
すると、今度は全然違う。
噛んだときの軽さ。
歯切れ。
崩れ方。
「ああ、クッキーってこうだよな」と、
体がちゃんと納得するサクサク感にかなり近づいたんです。
ここで、素直に疑問が湧きます。
だって、同じ油脂なのに、なんでここまで差が出るんだろうって。
考えてみると、バターって、やっぱりただの油じゃないんですよね。
冷えているときは固体で、生地の中で点在している。
焼いていくと溶けて、
しかもバターには水分が含まれているから、その水分が蒸気になって、生地の中を押し広げる。
そうやって、生地の中に小さな隙間を残しながら抜けていく。
この「隙間」が、焼き上がったあとに、
噛んだときに気持ちよく壊れる構造を作っているんだな、
と、食べながら腑に落ちました。
一方で、米油は最初から最後まで液体です。
生地の中に均一に広がって、粒子同士をきれいにまとめていく。
炒め物や焼き物では、すごく優秀で扱いやすい性格なんですが、
クッキーに関して言うと、ちょっと真面目すぎたのかもしれません。
だからといって、
「やっぱりクッキーはバターじゃないとダメだね」
で終わらせてしまうのは、少しもったいない。
というのも、
クッキーのサクサク感って、実はバター“だけ”で作られているわけじゃないからです。
砂糖は、焼いている途中で溶けて、冷めると再結晶して、
生地の構造を壊しやすくする役割を持っている。
小麦粉を使っている場合は、グルテンがごく薄く骨組みを作って、それをバターや砂糖が壊していく。
この「一瞬つながって、すぐ壊れる」
この感じが、あのサクサクの正体です。
でも、今回は米粉。
グルテンがありません。
つまり、
もともとの骨組みが存在しない。
だからこそ、油脂の性格や、配合の違いが、良くも悪くも、そのまま食感に出やすくなった。
じゃあ、バターを使わずに、この「壊れやすさ」を作る方法はないのか。
そう考えていくと、
片栗粉やコーンスターチといった、でんぷんの存在が見えてきます。
今までもいろいろ試してきましたが、
でんぷんは、グルテンの代わりにはなりません。
伸びるわけでもないし、網目構造を作るわけでもない。
ただ、加熱すると糊化して一時的に固まり、冷めるともろくなる。
この性質が、クッキーの食感づくりでは、意外と使えるんじゃないか、と思ったんです。
たとえば片栗粉。
米粉全体に対して5〜8%くらいだと、米粉らしいホロッと感を残しつつ、
少し歯切れが良くなる。
8〜12%くらいになると、
噛んだときにサクッと割れて、そのあとホロッと崩れる感じが出やすくなる。
ただ、15%を超えてくると要注意。
でんぷんの糊化が強く出すぎて、冷めたときに、「サクサク」ではなく「カチッ」に寄ってしまう感じが出やすい。
コーンスターチの場合は、
この片栗粉の経験を踏まえて考えると、粒子が細かく、糊化が穏やかなので、
8〜10%くらいで軽さが出やすいんじゃないかと思います。
だから、サクサク感を前に出したいなら、
片栗粉より、こちらのほうが扱いやすいかもしれません。
これはあくまで経験と感覚の話ですが、
配合率15%くらいまでは、まだクッキーの範囲に収まって、
それ以上になると、ちょっと厳しくなってくる印象です。
タピオカスターチは、さらに慎重。
粘りが強いので、使うなら3〜5%くらいまで。
ほんの補助として入れると、崩れ方に少し丸みが出ますが、
8%を超えると、サクサクというより、モチッに寄ってしまう。
冒頭でちょっと触れた、ポチッとしたドーナツの食感も、
たぶんこういう折り合いの付け方をしているんじゃないかな、なんて思ったりします。
いくつか挙げてみましたが、
どれも共通しているのは、「入れれば入れるほど良くなる」わけじゃない、ということ。
でんぷんは、つなぐけれど、伸びない。
だからこそ、割れる直前で止める量がいちばんちょうどいい。
今回の米粉と米油のクッキーは、決して失敗だったわけではありません。
むしろ、
何が足りなくて、何を足せばどう変わるのかが、
とても分かりやすく見えた料理というより実験でした。
次は、
片栗粉をほんの少し入れてみるか。
それとも、コーンスターチでいくか。
同じ鉄フライパン、同じ焼き方で、
もう一段、食感を探ってみようと思います。
クッキーって、
材料を増やす料理というより、壊れ方を設計する料理なんだなと、
改めて感じた出来事でした。













