鉄フライパンとは、どんなフライパン?
「鉄のフライパンは、どんなフライパン?」そんな大きな疑問があると思います。
「使いこなせるのかな?だってプロが使っているのをよく観るから私たちには無理そうだし、こびりついたり、手入れも面倒だって聞くし・・・」
そんな方へ、そして”鉄は初めて”と言う方へ、鉄のフライパンについてちょっと詳しくお話できればと思います。申し遅れました。あじねフライパンの内田と申します。
今、色々なフライパンが世の中にあります。表面加工のあるものやアルミ製の物、鋳物製、銅製のもの。色にしても模様があったり、カラフルな物もあったりします。
カラフルなものとは、ベースの材質の表面に塗装をしたものになります。
その代表格としてホーロー加工や焼き付け塗装のフライパンがあります。
ホーロー製は、表面にツヤあってとてもカラフルな上、絵柄もあったりします。
加工工程は、塗装された色や絵柄の上からさらに表面塗装をして、それを高温で焼付けします。そうすると、まるで表面がガラスで覆われたようになります。
こう言うと分かり難いですが、身近に似たものがあります。それはお茶碗などの陶器です。
陶器も釉薬を表面に塗り、これをかなりの高温で焼くことで表面をガラスのようなコーティング加工にしてしまいます。こうして出来たコーティングは表面をなめらかにしたり、耐水性を可能したりして、食器として使いやすいものにしてくれます。
話はホーローに戻りますが、ホーローも同じような効果となります。
ただ、落としたりぶつけたりしてしまうと、その表面のコーティングがかけてしまう事があり、その割れが腐食の原因になったりします。
よく「ホーローがかける」と言う表現がありますが、それはこんな性質から言われている事です。
ホーロー製ではない焼き付け加工もこれと似た工程で、ウレタン樹脂やアクリル樹脂系などの塗料を表面に塗ったり吹き付けたりして、それを熱をあてながら塗装を乾燥させます。
作業種類としては塗装なので、カラフルな色や絵柄なども可能で、実際に見ても焼き付け塗装されたフライパンは、実にはなやかなタイプが多いです。
色や絵柄とは用途が違いますが、フッ素樹脂などもこれと似た工程です。
では、次にフライパンの材質についてはどんな物があるのかと言うと、大きく分けて、アルミ製、鉄製、銅製、ステンレス製などがあります。
アルミ製フライパンとは、よくスーパーなどでも見るタイプのもので、その表面にフッ素樹脂加工のあるものから、その加工がないものもあったりします。
私達ではフッ素樹脂加工をしておりませんが、最近はフッ素樹脂加工についても3層、5層など多層コーティングが進んだものもあるようで、ただ、それだけ進んでいる技術なのに「どうしてはがれるのか?」と皆さんから質問を頂く事があります。
次に銅製フライパンについてです。
銅製フライパンは、とても熱伝導が良いことは皆さんご承知の通りです。
しかし金属の性質としては軟らかい事があり、形にしやすいと言う良い面はありますが、その反面、多少荒っぽい調理の場合キズがつきやすかったり、ぶつけたりすると凹みやすかったりします。
そうならないようにするために板厚を厚くしたりしますが、板厚があつくなると、比例して重くなります。(これは鉄フライパンも同じです)
またステンレス板を張り合わせているものも見ます。これは、銅よりも堅い金属を合わせる事で強度をもたせたり、また酸や酸化などの銅の弱い部分を補っているだと思います。
そしてIH器の普及で増えてきたのがステンレス製のフライパンです。
ステンレスは自然に皮膜をつくる性質があるので、水を使う所では錆防止となり大変重宝します。
ただ、熱の広がりがあまり良くない事から部分的に温度が高くなり、結果、調理としては焦げやすい事があったりします。
またお味噌汁など液体ものを温める際には、アルミ製のものとは全く違った様子に驚くこともあります。
この様に、どの金属にも、良いところと、そうで無いところがありますが、その性質や特質を知れば、その場面場面で活かせる事が出来て、どれもとても便利な道具として使うことが出来ます。
では「鉄のフライパンはどうなのか」になります。
少し前置きが長くなりましたが、これから詳しく説明します。
どの金属にも良いところと、そうで無いところがあると言いましたが、当然、鉄にも一長一短があります。
他の金属と同じ様に鉄も熱膨張しますし、錆が出ることもあります。
そもそも錆とは酸化と言って、空気とふれることでおきます。なので、この地球上にある限り、鉄が錆びないという事はないのですが、これには良い対策方法があります。
それは油を上手に使う方法です。
今、油を上手に使うと言いましたが、よく「鉄フライパンを使った後は油を塗らないといけない」と聞くと思いますが、この方法ではなく、もっと手軽な方法があります。
それは”お料理で使ったあと、まだ余熱のある内に水のみでこすり洗いをする”方法です。
こする物については、まだフライパンに余熱があるのでナイロンスポンジでは溶けてしまう事あるのでステンレス製などの金属タワシがお勧めです。
これを使ってこすり洗いをしますが、この時洗剤を使わないでこすり洗いをする事をお勧めしています。
なぜこの方法が良いのかと言うと、水のみ、なので適度な油がフライパンに残ってくれます。
じつはこの適度に残った油分が、鉄と空気を遮断する働きになり、錆をだしにくくしてくれる訳なんです。
その効果は、それだけではないのです。
鉄フライパンの最も重要なポイントは、油なじみと聞いたことがあると思います。
この油なじみなのですが、これが進むと、鉄フライパンは驚くほど使いやすく、とても便利な道具になります。
そうなると鉄フライパンは、手放せないかわいい道具となりますが、実はこの”油なじみ”は直ぐに出来るものではないんです。
どうやって出来るかと言うと、何度もお料理をして、お料理を積み重ねて行く事で徐々に出来てくる物なんです。要は時間がかかるんです。
この過程で、このお手入れ方法もすることが、油なじみを助けてくれているので、お勧めなんです。
そしてこの後は、かるく火にあて水分を飛ばし、冷めてきた位に収納するか、飛ばし切れなかった水分を布や紙などで拭いてから収納になります。
経験上、軽く火にかけ水分を蒸発させる前者の方がカンタンですので、私はこの方法をお勧めします。
この後、先程の「使った後に油をぬっておく」のも良い方法なのですが、収納の時塗った油のギトギト感が気になる方もいらっしゃると思いますので、その場合はこのカンタンな方法は便利ですので試してみてください。
次は、「そうは言っても自分が使いこなせるだろうか?」と言う疑問もあるかと思いますので、このことに触れたいと思います。
「鉄は体に良いから」と言うので使ってみたものの、こびり付いて「わ”・・・・・」みたいな事になって「やっぱり使いにくいからやめよう・・・」と思わた方、いらっしゃいませんか?
これについては大声で「大丈夫です!!」と言いたい所ですが、フッ素樹脂フライパンのように誰でもカンタンと言う訳ではないのが鉄フライパンです。
根本的にフッ素樹脂のタイプとは違いますし、フッ素樹脂では必要がない「コツ」も鉄フライパンでは必要です。
と言っても安心してください。そのコツは特別なものではありません。
「昔」と言ってしまうと語弊がありますが、鉄フライパンが主流だった時代は、皆さんが普通にされていた方法でもあります。
では、その方法とはどんなものか?をご説明します。
それは私達のフライパンで「上手に使うコツ」としてお伝えしているものですが、「フライパンに油を入れてから加熱して、煙が出て来たら一度深呼吸した位に食材を入れる。火加減はその後」これがその方法です。
この方法を試すとき、この煙に「焦げちゃうんじゃないの・・・」と少し驚く方もいらっしゃると思いますが、ぜひ、一度でもチャレンジしてみてください。
一度やると、なんとなくコツがわかってきます。そして「私にもつかえそう」っていう感じのフィーリングがありますので、これを、ぜひ、実感してみてください。
と言うのも・・・・実際「やってみたら結構上手くいきました」と、お使い下さっているお客様から感想を頂く事があります。でも、その方々も「はじめは・・・」とおっしゃる方が多いんです。
なので、まずはこの方法を試してみてください。やっぱりと言うか・・・・、「使えています」とか「フライパン調子いいです」って伺うと私たちも嬉しいものなんです。皆さんにもこの感覚を知っていただければと思っています。
また、金属ターナー(金属製のフライ返し)の使用もお勧めします。
フッ素樹脂では、表面のコーティングを長持ちさせることからナイロン製ターナーの使用を薦めていると思いますが、私達の場合は違います。
ナイロンターナーは、もともと軟らかい材質なので、鉄フライパンの場合、焼けた食材部分とフライパンの間にしっかり入り難く、焦げの美味しい部分がフライパンの底面に残され、これが結果的にフライパンにこびり付いたような感じになる事があります。
更にナイロンは、その性質上熱が加わると通常よりも更に軟らかくなります。
調理とは温度が当然ありますので、この調理中の温度がナイロンターナーを柔らかくし、これが、さっと食材とフライパンの間に入り難くしている事があります。でも、金属ターナーならそんな事はありません。
金属なら食材とフライパンの間にしっかり入り込んでくれて、焦げの美味しい所も上手に取りやすくしてくれるんです。
鉄のフライパンって体に良いって聞くけど本当?
鉄フライパンと一言で言ってもメーカーも色々あり、フライパンだって色々ありますので、ここではデーターがある私達のフライパンでお話をしたいと思います。
「貧血などに鉄フライパンは良い」「鉄フライパンは、お料理をするだけで鉄分が取れる」と言われていますが、実際はどうなの?どれくらい取れるの?と気になる方もいらっしゃると思います。
それはそうですよね。家族の健康や小さなお子さんの食事、育ち盛りのお子さんの食事なら、どうせ使うなら体に良いものを使いたいと思うのは、自然な気持だと思います。
そこで私達では以前にこんなテストをしてみました。
そのテストとは、ただ炊いたご飯と、そのご飯を私達のフライパンでただ炒めたものを食品分析センターに分析してもらったんです。
その結果、フライパンで炒めた方のご飯から0.03mgの鉄分が数値として出ました。
この数字について、私達としては「健康にいいこと」の裏づけとなるので喜ぶべき結果なのですが、「貧血を治したい」との使用目的を持って使われるのでしたら、この数字はそれほど期待できるものではないのではと思っています。
もし、効果の即効性にと考えていらっしゃいましたら、私は鉄フライパンより、サプリメントを選ばれた方がいいと思います。
でも、使わないより使ったほうが良いと言うことだってあります。
表現としては、あいまいだとお感じになられたと思いますが、私達は、鉄のフライパンを使うというのは「健康のために階段を使うようなもの」だと考えています。
ちょっと話がずれますが、健康を保つためにダイエットを心がけている方って多いと思います。
でも、なかなか上手くいかない。。。。
「じゃあ、上手く行った人って、何をしたの」と思って、上手くいった人の話を聞くと、共通していた事がありました。
それは、過激なダイエットではなく「毎日の中で少しずつでも続けられることを続けていた」事だったんです。
例えば「出来るだけ歩く」や「階段を出来るだけ使う」です。
これを聞いて「鉄フライパンを使う事と似てるな~」と、思いました。
また鉄分摂取について言えば、食べ合わを工夫すれば効果は高くする事が出来るんだそうです。
これは、特別なことではなく、お肉だけとか、野菜だけとかではなく、肉を食べたらサラダも食べたり、お肉と野菜で野菜炒めを作ったりするなど、動物性か植物性かで偏らないで食事を作るといった、至ってカンタンな方法です。
細かく言うと、鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄とがあり、動物性がヘム鉄、植物性が非ヘム鉄に分類されるのですが、実はどちらとも食べた分全てが鉄分として吸収されるわけではなく、吸収されずに外に出て行っている分もあるんだそうです。
でも、お肉と野菜を組み合わせることで摂取する効率がよくなるんだそうです。これで、よく言われているお料理が豚肉とブロッコリーの炒め物です。
でも、これが最高と言うわけではなく、要は「偏らず、好き嫌いしないで何でも食べる」、これにつきるんだと思います。
それに「それが鉄フライパンだったら、もっといいよね」って感じで、私は鉄フライパンと関わる者なので、こんな感じで勝手にひいき目に考えています。
鉄フライパンの上手な調理
フライパンはキッチンでも良く使う道具のひとつだと思います。
その事から「炒める」「焼く」「揚げる」のほか「煮る」や「蒸す」にも使われる方もいらっしゃると思います。
例えば、少し多目の油を入れてカンタンな揚げ物をしたり、口が広いので魚を煮たり、または野菜などは水を入れて蓋して「蒸し料理」に使ったりと、お鍋で作るようなお料理もフライパンで作る、そんな使い方をされているんだと思います。
でも、鉄フライパンの場合は「炒める」「焼く」「揚げる」「煮る」「蒸す」全てOKと言う訳ではありません。
もちろん全く出来ないと言うことではないのですが、鉄のフライパンは油なじみがポイントとお伝えした通り、油を使うお料理「炒める」「焼く」「揚げる」は得意でも、「煮る」「蒸す」は、せっかくの油なじみを落ちやすくしてしまうので得意ではないんです。
また、私たちの鉄フライパンは鉄そのものなので「煮る」「蒸す」は錆の原因にもなりやすかったりしますので、それを思うと「炒める」「焼く」「揚げる」を中心に使っていただくのがいいです。
そしてもう一つ。鉄フライパンで皆さん戸惑われる事があります。
それは表面が変わると言うことです。
これだけ聞くと、鉄フライパンだけが特別な事のように思いますが、鉄以外でもアルミや銅でも金属なら当然のように起こる事でもあります。
フッ素樹脂フライパンを使い慣れていらっしゃる場合はピンと来ないかもしれませんが、例えばアルミ製の場合なら水を沸かしただけでも内側がグレーっぽく色が変わったり、ピンでつついたような白いくぼみ斑点ができたり、銅製なら食材や調味料によっては新品の10円玉のようになったりします。
これは金属と食材が触れ合うことで自然に起こる反応だったり、そこに加熱が加わることで起こるものだったりするのですが、鉄のフライパンでも同じ様なことが起こります。
鉄の場合は、調理する前はフライパンの表面が黒っぽかったのに調理後にフライパンをみたら銀色になっていたり、くぼみのような跡がなっていたりする場合があります。
鉄フライパンをはじめて使われる方で、今までフッ素樹脂をお使いになられてた方にとっては、これは驚かれるかもしれませんが、鉄のフライパンを使うに当たっては自然な事なので、特に心配する事はありません。その後も大切なご愛用のフライパンとしてお使い頂けます。
また、これは特別な事ではなく、実はこの作用を昔から利用していたものがあります。それは、ぬか漬けに鉄くぎを入れたり、黒豆を上手に煮る時に鉄鍋を使う調理なんです。
これは上で挙げた鉄の作用を逆に利用したもので、現代の食品添加物に頼るものではなく、おばあちゃんの知恵だったり、昔から言い伝えられている体に害がないお料理の手法だったりして、昔からの先人の知恵として今でもある方法なんです。
色が変わったり、くぼみとなる原因については、煮物をした場合や酸やクエン酸の食材でお料理をした場合に起こりやすい事が分かっています(また昨今の過度の水の衛生事情も原因ではと言われている方もいらっしゃいます)。
またトマト料理などの場合は顕著に出ることがありますが、酸やクエン酸は大なり小なり多くの食材に含まれているものなので、実はフライパンの上ではこのような事は日常のように行われています。
でも、この場合も「フライパンが駄目になってしまった」と言うことではありませんし、鉄フライパンは鉄そのものなので体に悪いと言う事もありません。
日常起こっている事なので、鉄のフライパンを使っていく一つの通過点として、その後も愛着のある道具としてお使い続けていただけます。
文章ではわかりにくいと思うので、一般的なフライパンと鉄フライパンの違いについて表にしてみました。
一般的なフッ素樹脂フライパン | あじねフライパン | |
---|---|---|
金属膨張 |
起こる | 起こる |
錆 | 出ない |
出る場合もある |
表面の変化 | はがれなどが起こる | 変化する |
表面の黒いこびりつき(こげ) | 調理の際は、ない方が良い(きれいな方が効果がある) | あった方がよい(保護や油なじみになる) |
調理手順 | 始からこびりつかない効果で使える | コツが必要 |
高温調理 |
温度の上がりすぎは注意が必要 | 使える |
低温調理 | 使える | 使える |
煮る調理 | 使える | 使わない方がいい |
蒸し料理 | 使える | 使わない方がいい |
炒め物料理 | 強火は注意 | 使える |
焼き料理 | 強火は注意 | 使える |
揚げ料理 | 油なので高温注意 | 油なので高温注意 |
お手入れ(洗い方) | 洗剤を使ってスポンジなど柔らかいもので表面をキレイに保つ | 洗剤を使わずステンレスタワシなどで、こすり洗い |
空焚き | × | ○(過度は注意) |
鉄のフライパンは一生ものですか?と質問を頂きます。
「鉄のフライパンを一つ買えば、ずーっと使える」とお伺いする事があります。
また、お客様のお話の中でも「お母さんがずっと使っていたから、私も使ってみようと思って」なんてお聞きすると嬉しく思いますし「使い込んだ鉄フライパンほど使いやすくなる」とお客様からもお伺いしますと、鉄の醍醐味と言うか、鉄のフライパンと関わっていて良かったと思います。
その中で「鉄は一生もん」と言われている事はとてもうなずくことができますが、これは使う方法によると思っています。
童謡でも「♪お釜底ぬけ行かれない~」と言う歌があるように、あの分厚いお釜でも完全無欠と言う訳ではありません。
色々お話させて頂きましたが、使い方よって長持ち感も違ってきます。
物は「鉄そのもの」なので「煮る」「蒸す」よりも、やっぱり「焼く」「炒める」「揚げる」などを中心に使って、鉄の最大のポイントでもある「油なじみ」をよくしてあげる事が鉄と永く付き合うには重要なかぎになります。
鉄のフライパンは育てるように使うと言われているのは、要はこのような様事を含めて言われているんだと思います。
これまでお話してきましたように鉄のフライパンにはコツがあったり、得意でない事もあったりしますが、体に良いこと、熱源を選ばないこと、空焚きにも強いこと、そしてご家族の健康や、お子さんの成長、鉄が引だすお料理の楽しさなど、良い所がいっぱいあるのも鉄フライパンです。
私たちの鉄フライパンはたのしい道具です。
鉄について正しく知って頂ければと思い、長文ですがお話させて頂きました。