絹ごし豆腐で、豆腐ステーキを焼いてみる
絹ごし豆腐で、豆腐ステーキを焼いてみる
豆腐ステーキって、なんとなく「簡単そう」「ヘルシーそう」な料理に見えます。
でも、実際に作ってみると——
「え、崩れた…」
「ひっくり返したら割れた…」
「水っぽくて、ステーキ感がない…」
そんなふうに思ったこと、ありませんか。
実は、私もそうでした。
今日は、
豆腐ステーキがうまくいかない理由をきちんと整理しながら、
そのうえで、絹ごし豆腐であえてチャレンジする方法を書いてみようと思います。
木綿と絹ごし、どちらでもいい。でも今回は「絹ごし」でいく
豆腐ステーキを作るとき、よく聞かれるのが
「木綿と絹ごし、どっちがいいの?」という質問です。
結論から言うと、どちらでもOKです。
ただし、性格はまったく違います。
木綿豆腐は水分が少なく、組織がしっかりしています。
崩れにくく、味も入りやすいので、正直なところ失敗しにくい。
一方で、絹ごし豆腐は水分が多く、きめ細かく、なめらか。
その分、温まると一気にやわらかくなります。
扱いは少し難しいけれど、
うまくいったときの口当たりは、まったく別物。
この違いを理解したうえで、
今回はあえて、絹ごし豆腐で豆腐ステーキを作ります。
豆腐が崩れるのは失敗じゃない。むしろ自然なこと
ここが、今回いちばん大事な話です。
豆腐、とくに絹ごし豆腐は、
お肉のように「焼くと固くなる」食材ではありません。
豆腐は、大豆たんぱく質が作るゲル構造の中に、
大量の水分を含んだ食品です。
温度が低いときは、この構造がキュッと締まっています。
でも、50〜60℃くらいになると、中の水分子が動き出し、
たんぱく質同士の結びつきがゆるみ、弾力が下がっていきます。
食品科学の分野では
「貯蔵弾性率が低下する」と説明されますが、
要するにこういうことです。
豆腐は、温めるほど、ほどけるようにやわらかくなる。
つまり、お肉とは真逆の性質。
だから、
「最初はいけそうだったのに、途中で崩れた」
これは失敗ではなく、豆腐としてはとても正常な反応なんです。
崩れる前提で作ると、豆腐ステーキはちゃんとおいしくなる
まず、「ステーキだから大きく焼こう」という考えは手放します。
絹ごし豆腐の場合は、一丁を半分、もしくは三等分。
フライ返しにきちんと乗るサイズがちょうどいい。
最初から量を少なめにする。
これは、慣れない料理をうまく作るための、とても大事なコツです。
次に、豆腐の表面には小麦粉か米粉を、ややしっかりめにつけます。
これは味付けではありません。
表面に薄い膜を作って、中のやわらかさを支えるためです。
フライパンに油をひき、しっかり温めます。
煙が出て、一呼吸。
ここで豆腐を並べます。
絹ごし豆腐は冷たいので、
フライパンの温度を一気に奪います。
鉄フライパンは蓄熱性が高く、温度変化が緩やか。
だから、冷たい豆腐をのせても焼き負けしにくい。
26cmのフライパンなら、
まずは2切れくらいで十分です。
詰め込まないことも、かなり大事です。
表面が焼けたら、フライ返しでそっと返します。
ここで油を少し足し、もう一度温度を上げて、煙が出て一呼吸。
豆腐は常温に戻しにくい食材なので、
フライパン側を整えてあげる。
この考え方は、
豆腐に限らず、しっかり焼く料理全般でとても役に立ちます。
両面に焼き色がついたら、火は中火から弱火へ。
ここは、焼くというより温める感覚です。
中がほんのり温まると、
大豆の甘みが感じやすくなり、口当たりもぐっと良くなります。
冷たいままだと、せっかくの豆腐ステーキがもったいない。
豆腐は、植物性たんぱく質がぎゅっと詰まった、
とても優秀な食材です。
味付けはシンプルに、塩と胡椒で十分。
その代わり、添えものを少ししっかり味にします。
トマトソースで炒めた野菜や鶏肉などを添えると、
一緒に食べたときのバランスがとても良くなります。
料理は、知ると楽になる
豆腐ステーキは、
一見すると主役感はないかもしれません。
でも、
食材の性質を知って、道具の特性を活かす。
それだけで、失敗はぐっと減ります。
鉄フライパンは、
ただ焼くだけの道具ではありません。
食材の変化を、きちんと受け止めてくれる道具です。
私たちは、
レシピを増やすよりも、
「なぜうまくいくのか」を一緒に考えられる道具を作りたいと思っています。
そんな相棒があると、
料理は、もっと楽しくなります。











