焼けたあと、何を入れるかで料理は変わっていく

前回、
「焼く」というのは、ただ火を当てることではなく
食材から出てきた水分が抜けたあとにはじめて焼きが立ち上がってくる、
という話を書きました。

焼いているつもりでも実際にはまだ水分の中にあるような状態で
そこから水分が抜けることで香りや焼き色が出てくる。

そんなふうに見ていくと、焼くということの見え方が少し変わってきます。


そして料理をしていると、今度は別のことも気になるようになってきました。

せっかく水分が抜けて焼きが立ち上がったところへ
何を入れるかで料理の感じが少し変わるんです。


たとえば胡椒。

粗挽きの胡椒は粒が表面へ残るので、噛んだときに香りが立ちやすい。

でも、細かく挽いた胡椒は肉の表面へなじむように広がるので、味の中へ混ざっていく感じがある。

同じ胡椒でも少し変わる。


塩もそうです。

油と一緒に熱を入れながら使うと全体へ広がる感じになるし、
最後に振ると粒感が残って少しアクセントみたいになる。

前は、塩と胡椒ってそこまで気にしていませんでした。

でも料理していると、

「ここで入れたらどうなるんだろう」

とか

「ちょっと変わるのかな」

とか

そんなことを考えるようになってきます。

そして実際、少し変わる。

その小さな違いがなんだか面白い。

醤油やタレも同じです。

入れた瞬間に香りが立つことがありますが、同時に水分も加わるので、
フライパンの上の状態はまた変わっていきます。

前回書いたように
焼きというのは水分が抜けたあとに立ち上がってきます。

だからそこで液体を入れるということは、また水分を加えることでもある。

もちろんそれが悪いという話ではありません。

照り焼きみたいにタレが入ることで美味しくなる料理もあります。

ただ、今フライパンの上で何が起きているのかをなんとなく見ながら料理していると
今まで何気なくやっていたことにも少しずつ理由が見えてきます。

なんで最後に入れるんだろう。
なんで強火なんだろう。
なんでこの料理は香りが変わるんだろう。

でも全部わからなくても、なんとなく料理が少し面白くなってくる。

鉄フライパンを使っているとその変化が少し見えやすい気がします。


音が変わる。
香りが変わる。
水分の感じが変わる。

毎日料理していると少しずつ見えるものが増えてくる。

鉄フライパンも、最初から完成しているというより
使いながら少しずつ変わっていく道具です。

だからなのか、
料理もやりながら少しずつ変わっていくものなんだな、と思っています。

 

イカのごろ焼き
2026年05月15日