鉄フライパンで丸ごと茄子を焼く贅沢 ― 焼くだけで出会える茄子の知らない味と栄養
鉄フライパンで楽しむ、丸ごと茄子の“蒸し焼き”という贅沢
**鉄だからこそ出会える、茄子の知らない顔**
茄子って、なんだか不思議な野菜です。
味噌と合わせるとホッとする味になるし、豚肉の脂をまとえば急に色気のある料理になる。ピリ辛にしてご飯が進むこともあれば、揚げ浸しのように優しい味にもなる。
「味を吸ってくれる」優秀な存在として、いつも台所で活躍してくれていますよね。
でも実は、そんな茄子に “主役の顔” があるのをご存じでしょうか。
それは、調味料を一切使わないし切らない。ただ丸ごと焼くだけ という、とてもシンプルな料理です。
でも、一口食べた瞬間に思わず「えっ……茄子って、こんな味だったの?」と固まってしまうほど。
今日はそんな、鉄フライパンだからできる丸ごと茄子の蒸し焼きと、そこに隠れている栄養のお話を交えながら、ゆっくりとご紹介したいと思います。
■ 茄子を丸ごと焼く——それだけで物語が始まる様な
まず、茄子を洗います。切らずに、ヘタもつけたまま。そのまま鉄フライパンに コロン と入れるだけ。
油だって引きません。
無造作に置くだけですが、鉄フライパンからは静かに熱が伝わり、茄子は表面からじんわり温まっていきます。
火加減は中火より少し弱いくらい。コロコロと転がしながら熱を通します。
途中、箸でそっと押して、全体がぷにっと柔らかくなったら焼き上がり。この瞬間、茄子の中では水分が蒸気になり、まるで蒸したようにとろっと仕上がっています。
ここまで、味付けゼロ。でも、その茄子を見ただけでもう期待がふくらんでしまうんです。
■ 茄子の“声”が聞こえた気がした、あの瞬間
焼いた茄子をお皿にのせ、縦に切れ目を入れるとふわっと湯気が上がり、香ばしい香りが広がります。
そこに生姜。すりおろしでも、刻みでも、千切りでもOK。好きな方法でのせてください。
そして上からお気に入りの醤油をひと筋流し込みます。茄子がじゅわっと吸い込んでいく、それを見ているだけでご飯が食べられそうです。
そして、箸でホロッと裂いてひと口。
「こんなのあったの!?」という驚きが、自然にこぼれます。
普段は“調味料を受け止める役”の茄子が、この調理法では 自分の味を前に出してくる んです。
まるで「実はね、私こんなポテンシャルあるんです」と言っているよう。
■ ちょっと科学の話:茄子の栄養と“丸ごと焼き”の効果
ここからは少しだけ栄養の話を。長くならないよう、茄子だけにできるだけ柔らかく書きますね。
●茄子がもともと持っている主な栄養(日本食品標準成分表より)
•ナスニン(アントシアニン):皮に多く、抗酸化作用
•クロロゲン酸:ポリフェノールの一種、抗酸化作用
•カリウム:むくみ対策に
•食物繊維:腸内環境を整える
•葉酸、ビタミンKなど
• そして、約90%が水分
茄子って実は「栄養が少ない」と思われがちですが、抗酸化物質(肌や細胞のサビを防ぐ働き)がしっかり入っています。
特に 皮に含まれるアントシアニン は強力で、・紫外線ダメージの軽減・抗炎症・血流サポートなど、研究結果が出ています(農研機構ほか)。
●焼くとどうなる?
(1)蒸し焼きで“水分と栄養が逃げにくい”丸ごと焼くと中の水分が閉じ込められ、茄子の栄養が流れ出しにくくなります。
茹でる→流れ出る
揚げる→油を吸って変質炒める→水分蒸発
という弱点がある茄子にとって、丸ごと焼くのはむしろ茄子に優しい調理方法なんです。
(2)皮のポリフェノールがしっかり残るナスニンは熱に弱いと言われますが、“高温で短時間”の焼き方は比較的失われにくいことがわかっています。
そうは言っても丸ごと焼くと皮の紫部分が焦げて良い状態とは言えませんが、それでも残れば抗酸化物質も残ります。
(3)旨味成分が増える茄子に含まれるアミノ酸(グルタミン酸など)が加熱で変化し、旨味が感じやすくなります。
「丸ごと焼くと甘い」「あれ、味が濃い?」と感じるのは、このためです。
●逆に、失われるものは?
・ビタミンC これは熱に弱く、ほとんど残りません。と言っても茄子はもともとビタミンCが多い野菜ではありませんが‥‥‥
・葉酸の一部 水溶性なので若干減る程度
でも、丸ごと焼きは「最も失われにくい調理法」のひとつですで、実は炒めるより栄養の損失は少ないくらいです。
■ こんなにシンプルなのに、“鉄だからこそ”の料理
ここで大事なポイントがあります。
この調理法は 鉄フライパンだからこそ可能 なんです。
油なしで、茄子だけを丸ごと焼く。これはフッ素加工などの表面加工フライパンだと温度が上がりすぎて塗膜が傷むことがあるのでおすすめ出来ません。
でも、うちのような表面加工のない鉄フライパンは高温に強く、熱がじわっと中に届くので茄子のような水分の多い野菜にぴったり。
私たちの提供している「板厚や深さを選べるフライパン」も、こういった調理の幅を広げるためのものなんです。
道具が変わると、料理が変わる。料理が変わると、暮らしの楽しみ方が変わる。そのきっかけになれたら、といつも思っています。
■ シンプルなのに忘れられない、茄子の新しい物語
「焼いただけ」といえば、それまでなんですが、でも、この料理はなぜか心に残ります。
と言うのは、茄子が、ひょいっと顔を出してこう言っているみたいなんです。
「実はね、私ってこんな味も出せるんですよ」
スーパーで茄子を見かけたら、ぜひ思い出してみてください。
「丸ごと焼く茄子、やってみようかな」と。
生姜と醤油だけ。切れ目を入れて、じゅわっと流し込むだけ。
すごく簡単なのに、“茄子の新しい物語” に出会えると思います。
そして鉄フライパンは、そんな発見をこれからも何度も見せてくれます。
料理がもっと楽しくなる——そんな瞬間がお家の台所で増えていきますように。











