鉄フライパンで焼きドーナツを作る

鉄フライパンで焼きドーナツを作る

 

「ドーナツって揚げるものだと思ってたけど、鉄フライパンで焼けるの?」
そう思った方、正解です。焼けます。
しかも、外は香ばしく中はふっくら。油っこくないのに、しっかり満足感がある。
今日はそんな“焼きドーナツ”を、鉄フライパンで楽しむお話です。

 

 

■ 生地づくりの主役はベーキングパウダー

焼きドーナツのふっくら感をつくるのは、なんといってもベーキングパウダーと玉子のシナジー効果!

この「ふくらむ」仕組みを知ると、ちょっとだけ科学も料理も楽しくなります。

ベーキングパウダーには主に炭酸水素ナトリウム(重曹)酸性塩(リン酸二水素カルシウムなど)が入っています。
この2つが水分と熱に反応して、二酸化炭素(CO₂)を発生させるんです。
つまり、生地の中で細かい気泡が生まれて、ドーナツがふっくら膨らむというわけ。

面白いのは、ベーキングパウダーが「2段階で」働くところ。

混ぜて寝かしている間にも、すこしずつガスが発生して膨らみはじめ、
焼くときの熱でもう一度膨張が起こります。


このため――
👉 寝かしているときは“そっと”扱うのが大事
。
👉 焼く前にグルグルかき回してしまうと、せっかくできた気泡がつぶれてしまいます。
生地は優しく扱う。まるで小さな泡を抱きしめるように。
このひと手間で、仕上がりのふんわり感が変わります。

 

 

■ 卵が助ける「ふっくら」のもう一つの理由

卵もまた、ふっくら食感を支える重要な役者です。

卵の中にはレシチンやたんぱく質(アルブミン)といった物質が含まれており、
これが加熱によって空気を抱き込みながら固まり、
生地の中に“やわらかい骨組み”をつくります。
たんぱく質が熱で変性して膜を張ることで、ベーキングパウダーのガスを逃がさずキャッチ。
結果として、きめ細かく弾力のあるドーナツに仕上がるのです。

さらに、卵の中の水分が加熱によって蒸発する時、
その蒸気もまた“膨らむ力”を後押ししてくれます。
つまり、卵は味だけでなく「構造」や「ふくらみ」にまで深く関わっているんですね。

 


■ お砂糖もちゃんと仕事している

「甘くするため」だけがお砂糖の役割ではありません。
実は、お砂糖もベーキングパウダーの反応を穏やかにして、
ふくらみを安定させてくれる働きがあります。

加えて、砂糖は焼くときにメイラード反応(アミノ酸と糖が反応して色づく現象)を起こし、
こんがりとした焼き色と香ばしさをつくります。
この化学反応が、“焼きドーナツらしい香り”の正体と言ってもいいでしょう。

「材料の特性を知る」って、理科の実験みたいにワクワクしませんか?
卵も砂糖もベーキングパウダーも、みんなチームプレイ。
それぞれが小さな役割を果たして、あのふんわり感と香ばしさをつくっているんです。

 

 

■ 焼くときのコツ ― 最初の一枚はテストでOK!

さて、ここからが鉄フライパンの出番。

まずフライパンに油を薄くひき、煙が出て一呼吸置いたタイミングで生地を入れます(この“ワンテンポ”が、こびりつきを防ぐポイントです)。

ただし、最初の1回目は鉄フライパンは熱の伝わり方と調理台の温度ムラが出やすいもの。
なので最初の一枚は「テスト焼き」と思って、気楽にいきましょう。
生地の焦げ具合やふくらみ方を見て、次から調整していく。
これもまた、鉄フライパンの楽しみのひとつです。

 


■ ベーキングパウダーとイーストの違い

焼きドーナツではイーストではなく、ベーキングパウダーを使います。
この2つ、実は膨らむ仕組みがまったく違います。

イースト:生きた酵母が糖を分解してガスを出す(時間をかけて発酵)
ベーキングパウダー:化学反応でガスを出す(すぐに反応が始まる)

そのため、ベーキングパウダーの場合は、形を成形してから脹らみが広がり、つなぎ目が外れたりすることがあります。
なのでドーナツを棒状にしてからつなげてドーナツ型にするよりも、最初から輪っか型に整えておくのがおすすめ。
せっかくのまるい形が焼いている間に開いてしまう…なんてことも防げます。

 

 

■ しっとり派には「軽く蒸す」仕上げを

焼きドーナツをもっとしっとりさせたいときは、
焼き上がり直前に焼いているドーナツを避ける様に、大さじ半分ほどの水を入れてすぐ蓋をする。
このひと手間で、ドーナツの中にほんのり蒸気がまわり、
中のしっとりとした仕上がりを助けてくれます。
鉄フライパンは熱を逃がさないので、
この“軽い蒸し焼き”にもぴったりなんです。

さらにバターを香りを効かせるならその後にすかさずバターをイン!

余熱で溶かす感じで絡めればオッケー👍

 


■ 焼きドーナツが教えてくれる「素材の力」

卵、砂糖、ベーキングパウダー――どれも特別な材料ではありません。
でも、それぞれの“働き”を知ると、いつものお菓子作りが急に面白くなります。
「ただ混ぜて焼く」から、「理屈を知って育てる」に変わる。

鉄フライパンの使い方と同じです。

火の入り方、香りの出方、焼き色の深さ――五感がぜんぶ動き出すような感覚で、
フライパンの中で、素材たちが小さく踊る。
その瞬間を見て、聞いて、感じることこそ、手づくりの楽しさかもしれません。

 

 

■ 最後に

焼きドーナツづくりは、難しい技術よりも「観察する目」が大切です。
泡の立ち方、生地の色、香りの変化。
それを感じ取りながら焼いていると、ドーナツだけでなく、
鉄フライパンとの距離もぐっと近くなるはず。

今日のキッチンで、ぜひ一度お試しを。
あなたのフライパンから、香ばしいドーナツの香りが立ちのぼるかもしれません。

 

 

フライパンでドーナツを焼く


2025年11月08日