レバーを上手に炒める「鉄フライパン編」
レバーを上手に炒める「鉄フライパン編」
ドンと横たわるレバーのパック。
「おいしそう!」というよりは、ちょっと構えてしまいませんか?
鶏もも肉や豚ロースだったら気楽に手が出るのに、レバーとなると心の中でブレーキがかかる。
理由はシンプルで——レバーは普通の肉じゃないから。
色は赤黒くてツヤツヤ。焼いても「こんがりきつね色」のサインが出ない。さらに炒めているとぷくっと膨らんだり、逆に反り返ったり。いつもとは違う状況に「え、これ大丈夫?」って思う事もあったりして
そう、レバー炒めは最初から「読み切り小説の謎の登場人物」みたいな存在感なのです。
下ごしらえは牛乳より“指”
レバー下処理の定番といえば「牛乳に浸す」。でも、ここで声を大にして言いたい。
牛乳より先にやるべきことがあるんです。
それは血の塊を直接とる。
切った断面に赤黒いゼリーのような塊が見えること、ありますよね?あれこそが臭みの元凶。
箸とかで取り除くだけで臭みはかなり軽減されます。
牛乳に浸すのもアリですが、敵を正面から叩いた方が確実なんです。
塩は直前?それとも前もって?
ここ、気になる人が多いんじゃないでしょうか。
「下味だから早めに塩を振っておく」——これ、普通の肉なら正解です。ところがレバーは塩を振って放置すると、じわじわと水分がにじみ出てきます。これは魚を焼く時と同じでその水分と一緒に臭みも出てくるのですが、同時に旨味まで逃げてしまう。
農研機構の研究でも「塩をふって置いた肉は保水性が下がる」と実験結果が出ています。つまり、長時間置くとパサパサ一直線。
では、どうするのか。
答えはシンプル。炒める直前に塩を振る。振って数分、で出た水分を拭き取り、すぐフライパンへ。
これでどうでしょう
水分が必要以上に出る暇もありません。
火の通し方は「余熱任せ」
厚生労働省のガイドラインによると、レバーなどの内臓肉は中心温度75℃で1分以上の加熱が安全。生焼けは食中毒のリスクが高いので絶対に避けたいところ。
でも「しっかり火を通そう」と思って頑張りすぎると、今度はカチカチパサパサに。レバーは普通の肉より水分が多く、加熱が長いと急激に乾きやすいからです。
おすすめの作戦はこう。
中火で表面を1分半ほど焼いて、あとは裏目
鉄フライパンなら余熱も使って芯まで火が届かせても面白いと思います。焼きすぎを防ぎつつ、安全性も確保。これが家庭でできる焼きのラインです。
臭みを消す脇役者たち
•生姜やにんにく:月並みですが炒めると香りが立ち、レバーの匂いをやわらげます
•日本酒やワイン:アルコールが飛ぶときに一緒に臭み成分も飛び去る
•ごま油:香ばしさで「レバー臭」をうまく上書きしてくれる
•フライパンに残った脂はお皿に乗せない
つまり、臭み消しは「別の香りでレバーを包む作戦」。
と去る者は追わない作戦。
これだけで、苦手な人も一口目からずいぶん違って感じるはずです。
塩だけでもいける。でも遊んでみよう
ここからが本題。「味付け、どうする?」です。
レバーは実は、塩だけで十分おいしい。シンプルに塩なら「あれ、こんなに旨味があったんだ」と気づかされます。
でも、人間って欲張りですからそこからもうひとつ遊びたくなる。
たとえば:
•塩+レモン:爽やか。焼肉屋さん的だけど、家庭でやると意外と焼肉屋さんの答え合わせてができます
•塩+マヨネーズ:ジャンク感とレバーのコクが妙に合う。マヨネーズ大好き派の私にはかかせません
•塩+卵:溶き卵にくぐらせれば、すき焼き気分。黄身だけ使えばさらに濃厚さ増し増し
•塩+ごま油ちょい足し:韓国風。ビール泥棒になります
•塩+黒胡椒+はちみつ:甘辛バランスでワインに最高。こらは反対派もいるはず。でも、ここまで楽しめるのも面白いです
「卵につけて食べるレバー」なんて発想、やってみないとわからない面白さ。テーブルの空気がちょっと変わります。
レバーの形が変わるのはなぜ?
炒めていると、レバーが反り返ったり膨らんだり。
これ、原因は周囲の薄い膜。加熱でキュッと縮むので、形が変わってしまうんです。
あまりにもきついなら解決策は簡単。一口大に切るときに膜に切れ目を入れる。たったこれだけで暴れん坊レバーが大人しくなります。仕上がりも見た目がきれい。
鉄フライパンのいいところ、ちょっとだけ
鉄フライパンは熱が早く回るので、短時間でしっかり火を通せるし、余熱も使える
だから「焼きすぎパサパサ」になりにくいんです。
それともうひとつ。鉄分がわずかに溶け出すので、レバー+鉄フライパン=鉄分のダブル補給。特に鉄不足が気になる世代にはありがたい組み合わせです。
まとめ
• 血抜きは「血の塊を取る」でOK
• 塩は直前に振る。出た水は拭く
• 中火+余熱でふっくら安全
• 臭みは香味野菜や酒でカバーも
• 味付けは「塩だけ」から「塩+遊び」でワクワクを
レバーは一見ハードル高め。でも、コツさえ知れば実は「家庭で一番楽しい食材」になるかもしれません。台所でぷくっと膨らむレバーを見ながら、「よしよし、今日はいい感じだぞ」とニヤリ。そんな瞬間が訪れたらもう勝ち。
次にスーパーでレバーを見かけたら、ちょっと勇気を出してカゴに入れてみてください。塩とレモン、卵黄、マヨネーズ…どれにしようか考えるだけで、夕飯が楽しみになりますよ。










