焼きダレとの付き合い方、「鉄フライパンで焼く時」編

焼きダレとの付き合い方、「鉄フライパンで焼く時」編

料理をしていると、つい考えてしまうことがあります。
「タレをからめると焦げちゃうかな」「フライパンにこびりついたら後片づけが面倒そう」――。

特に焼きダレを使った料理は、焦げやすいイメージが強くありませんか

その時なぜ焦げるのか、その仕組みを少し知るだけでタレとの付き合い方はずいぶん変わります。

 


焦げる原因は甘みにあり?

まず知っておきたいのは、タレが焦げる、こびりつく原因の一つに「甘み成分」があります。

もちろん、焦げやこびりつきは砂糖だけではありません。食材の焼き過ぎ、油の量、水分、調味料の塩分、具材から出る汁などさまざまな要因が重なって起こります。

けれども甘みは焦げやすさを決める目安になるんです。
そして甘みとひと口に言っても、砂糖(ショ糖)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、さらに人工甘味料まで種類は豊富。

それぞれ「融点(溶け始める温度)」や「カラメル化(焦げ始める温度)」が異なり、これが料理に影響しているのです。

 

 

甘みごとの焦げやすさを比べてみよう

ここで代表的な甘味成分を表に整理してみましょう。数値は文献に基づく一般的な目安です(条件により多少前後します)。

甘味成分 ①融点(溶け始め) ②カラメル化開始温度 ③特徴・扱いやすさです。

砂糖(ショ糖)①約160℃で分解開始 ②160〜170℃
        ③比較的高温に強い。中火で煮詰めても扱いやすいが、200℃を超えると真っ黒に焦げる。

ブドウ糖(グルコース)①約146℃  ②150〜160℃
            ③砂糖より少し低い温度で焦げる。中火寄りで扱うと安心。

果糖(フルクトース)約103℃  ②110〜160℃        
           ③ 最も焦げやすい。余熱でも色づきやすい。甘みは強いが火加減注意。

アスパルテーム ①約80℃付近で分解  ②高温不可  
         ③熱に弱い。加熱調理では分解するため、仕上げに加えるのが基本。

エリスリトール①約121℃  ②明確なカラメル化なし(高温で分解)
        ③カロリーゼロ甘味料。カラメル化しないので「照り」は出にくいが焦げ付きにくい。

キシリトール ①約93〜95℃ ② 明確なカラメル化なし
        ③溶けやすく熱に弱い。焦げ付きは起こりにくいが甘さはやや軽い。

ラカント(羅漢果+エリスリトール①②成分により異なる
    基本的に焦げにくい ほぼカラメル化しないため、煮詰めても色付きにくい。ダイエット系レシピ向き。

 

 

温度のラインを意識すると安心

こうして比べてみると、果糖は100℃台前半で焦げ始める一方、砂糖は160℃までは余裕があります。

つまり、ブドウ果糖か、果糖ブドウ糖などでも果糖が多いタレなら「余熱で仕上げる」くらいが正解。

反対に砂糖ベースのタレなら中火でも使いやすく、200℃に届かないよう見てあげれば照りをしっかり出せます。
また、エリスリトールやラカントは「焦げにくい」ため、見た目のテリ感を求める料理には不向きかもしれません。逆に「こびりつきを減らしたい」「焦げを避けたい」人には使いやすい甘味料と言えます。

 

 

焦げは「敵」ではなく「味方」

ここで大切なのは、焦げは必ずしも悪いものではないということ。

たとえばお好み焼きに塗ったソース。焼けた香ばしさが好き、という方も多いでしょう。

一方で、照り焼きチキンのタレは焦げすぎると苦味が出るので、テリが出た時点で仕上げたい。
つまり「どのくらい焦がしたいのか」を選べるのが家庭料理の面白さです。焦げを避けるか、あえて生かすか。

甘みの温度特性を知っていれば、それを自在にコントロールできるようになります

 

 

鉄フライパンだからできること

ここで私たちの鉄フライパンの話を少し。板の厚い鉄フライパンは温度が安定しやすく、その為タレを入れても急に温度が下がらないのが特長です。

だからこそ、焦げやすいタレを扱うときでも安定感があり、余熱を使った仕上げがしやすいんです。

さらに、板の厚みや深さを選べるのもポイント。厚みのあるフライパンは砂糖系のタレを焦がさず照りを出すのに向いていますし、深さのあるタイプならフライパンを振って食材やタレが飛び散らず、煮からめる、なんて料理も得意です。
またじんわり広がる熱でタレが一気に焦げつきにくく、全体に絡みやすけなります。

「タレを使うとフライパンが‥‥」と敬遠していた方は意外に鉄フライパンは面白いかもしれません。

 

 

家庭料理がもっと自由に

毎日の料理はちょっとした知識で驚くほどラクになります。
「果糖系タレは余熱で」「砂糖系は中火でOK」「人工甘味料は仕上げに」――。こうした目安を知っているだけで、焦げやこびりつきのストレスはぐっと減ると思います。

そして、焦げを「避ける」だけでなく「どう生かすか」も選べるようになると、お料理はもっと自由で、もっと楽しくなります。

 

 

まとめてみました

焼きダレとの付き合い方は、ただ「焦げを避ける」だけではありません。甘みの種類ごとの焦げやすさを理解すれば、火加減の調整や仕上げ方がぐっと楽になり、むしろ料理の幅が広がります。

そして、その自由さを最大限に引き出してくれるののに鉄フライパンは、アリです。

板の厚みや深さを選べることで、自分の料理に合った一枚が見つかる――そんなフライパンがキッチンにあれば、今日の料理がきっと楽しみになるはずです。
焦げを知って、焦げを味方に。

焼きダレとの新しい付き合い方を楽しんでみてください。


鶏の照り焼き






2025年10月22日