鉄フライパンが苦手な調理

鉄フライパンが苦手な調理

鉄フライパンは、焼く、炒める、揚げるといった油ベースの調理にとても向いています。
例えば、野菜をシャキッと炒めたり、お肉をこんがり焼いたり、あるいは唐揚げや天ぷらのような揚げ物も、この鉄フライパンがあればその熱伝導の良さでカリッと仕上げることができます。

ですから、油を使った調理においては鉄フライパンはまさに頼もしい相棒です。

 

しかし、世の中には「煮る」「蒸す」といった、水をベースに使う調理があります。
この水を使った調理は、実は鉄フライパンが少し苦手とする分野です。

なぜかと言うと、鉄フライパンは基本的に油の膜で守られている状態が一番長持ちするからです。

焼く、炒める、揚げるといった調理では、食材から出る水分はあるものの、フライパンの表面には油の層がしっかり残ります。そしてこの油の層が、空気中の酸素と鉄が直接触れることを防ぎ、いわゆる酸化鉄、つまり錆びるのを防いでくれます。

しかし、煮る、蒸すのように水をベースにした調理をすると、油の膜が取れてしまい、鉄が直接空気や水分と触れる状態になってしまいます。
結果として酸素と反応して錆びやすくなってしまうのです。

さらに、調味料の存在も錆びやすさに関係しています。


特に塩分は、水分を吸いやすい性質があります。自然塩と精製された食塩では、その吸水力が大きく異なります。自然塩にはマグネシウムやカルシウムなどの成分が含まれており、水分を保持しやすい性質があります。そのため、自然塩が残っていると水分をフライパンの表面に残してしまいやすく、結果として錆びが発生しやすくなるのです。

この現象は、私たちが日常で目にする海辺の風景にも似ています。海辺では、塩風が家や自転車に付着します。水はすぐに蒸発しても、塩はそのまま残り、水分を保持した状態が続きます。そのため、鉄部分はサビやすくなるのです。つまり、塩分を含んだ水は鉄にとって天敵と言えるわけです。

 

こんなふうに言ってしまうと、鉄フライパンにとって自然塩はよくないし、さらには塩は健康に悪いとよく言われますので、完全な塩は悪者になってしまいますが、そうではありません。

自然塩は適量を使うことには大きなメリットがあります。自然の塩にはミネラルが豊富に含まれ、体内の水分バランスを整え、神経や筋肉の働きを助けるなど、健康維持に役立ちます。

料理でも、自然の塩を使うことで素材の味を引き立て、まろやかで深い風味が生まれます。
それにミネラルを含む塩は、ナトリウムを排出する作用がありますから、自然の塩は理にかなったものでもありますので、過剰摂取を避けつつ、自然の塩を上手に取り入れることが、体にも美味しさにも良いのですので誤解しないでください

そして、煮物や蒸し料理は水と塩の両方が存在するため、鉄フライパンにとってはやや扱いが難しい調理になるわけです。

それでも、「鉄フライパンで煮る料理や蒸す料理は絶対にダメか」と言われると、そうとも言い切れません。

例えば餃子を思い浮かべてください。
餃子はフライパンで焼く料理ですが、実際には焼き始めた後にお湯を入れて蒸し焼きにします。


つまり、油を使っているけれど、水で煮る工程も少し入っているのです。このように、料理の多くは「焼く」「炒める」「揚げる」と「煮る」「蒸す」が混ざり合っています



ですので、鉄フライパンを油ベースの調理だけに限定して使うのは現実的ではありません。
では、どうやって鉄フライパンを煮る、蒸す料理でも上手に使うかというと、いくつかポイントがあります。

まず、油の膜を意識してあげることです。料理の前に少し多めに油を敷いたり、そんな料理後には表面に薄く油を引いたりするだけで、鉄を守る膜ができ、錆びにくくなります。

こうした工夫で、鉄フライパンでも完璧とは言えませんが対応できるようになります。

もちろん、鉄フライパンはもともと錆びやすい金属です。地球上には空気があり、その中には酸素が含まれています。
鉄は酸素と触れるだけで酸化し、錆びてしまう性質があります。しかし、私たちはこの性質を理解し、油という保護膜を使うことで鉄を守っているわけです。
ですから、「鉄フライパンは油ベースの調理が得意」「煮る、蒸すはやや苦手」という知識は、フライパンを長持ちさせるための大切なヒントになります。


また料理の現場では、野菜やお肉から水分が出ることもありますので油の膜が部分的に取れてしまうことがあります。

ですからどの料理も油で完全に守られているわけではありません。しかし、ちょっとした工夫でカバーできるのです。つまり、料理の状況やフライパンの状態を見ながら、少し油を足したり調整したりすることで、鉄フライパンを上手に使うことができます。


こう書くと難しく感じるかもしれませんが、実は私たちの生活の中の「気遣い」とよく似ています。
例えば家族や職場で、誰かが疲れていたり体調が悪そうだったりした時、「大丈夫?」と声をかけたり、「その仕事は私がやっとくよ」とサポートしたりしますよね。
鉄フライパンも同じで、状態をよく見て少し手をかけてあげると、長く元気に働いてくれるということです。

油を敷くことや調理後の手入れは、まさに「フライパンへの気遣い」と言えるのです。


ですから、鉄フライパンを使う時には「絶対にこれなら大丈夫」「これなら使っちゃダメ」と厳密に決めつける必要はありませんが、鉄の性質を理解して、状況に応じて少し工夫をすることで、煮る、蒸す料理も楽しむことができます。
そして、こうした小さな気遣いと工夫が、鉄フライパンを長く、楽しく使うコツになるのです。


まとめると、
鉄フライパンが苦手な調理は、主に水をベースにした「煮る」「蒸す」です。その理由は、水分や塩分がフライパンに残りやすく、鉄が空気と触れることで錆びやすくなるからです。

しかし、油の膜を意識して保護したり、調味料の使い方に気を付けたりすることで、十分に対応できます。そして、この使い方は料理人のちょっとした気遣いや優しさと同じように考えると分かりやすく、親しみやすくなります。


鉄フライパンと一緒に料理を楽しむためには、少しの工夫と気遣いがあれば十分楽しめると思います。

 

鉄フライパンで餃子を焼く
2025年10月10日