鉄フライパンでつくる、幸せな天津

鉄フライパンでつくる、幸せな天津

──卵の香ばしさと、とろみの魔法。
天津飯って、なんだか特別な響きがあります
ふんわり卵にとろりとしたあんがかかる。おうちで作ると「今日はちょっと頑張った日」みたいな気持ちになる料理。

けれど、実際のところ、鉄フライパンがあれば、そんな天津もぐっと身近になります。
鉄フライパンというと、「こびりつくんじゃない?」「卵料理は難しそう」と思われがち。でも実はその逆。

コツさえつかめば、鉄ならではの熱の伝わり方が卵を一気にふくらませ、香ばしさとやさしい口どけを生み出してくれるんです。

 

■ まずは、卵をどう焼くか

天津の主役は、もちろん卵。
でも実は、天津の卵にはいくつかの「顔」があります。
たとえば、しっかり焼いたタイプ。
中までしっかり火が通っていて、食べごたえがあります。ご飯にのせたときの存在感も抜群。

一方で、とろとろタイプ。
箸を入れた瞬間、ふんわりほどけるような食感。卵の甘みが残り、あんと絡んだときのなめらかさが格別です。

そしてその中間、半熟タイプ。
外はふわっと、内側は少しとろみを残す。食べ進めるうちにご飯と絡みながら味が変化していくのも楽しい。
「どれが正解?」と聞かれたら、答えはひとつ。
どれもおいしい。
天津は自由な料理なんです。しっかり焼いても、ふんわり仕上げても、作る人の気分次第で良い。今日はカリッと香ばしく、明日はふんわり優しく。それでいいんです。

 

■ 具材の選び方も、もっと自由でいい

天津というと、つい「カニ入り」が頭に浮かびますよね。
もちろん、本物のカニが入れば最高。でも、カニカマだって十分おいしい。むしろカニカマはいろいろのがあって、それを楽しむのもオッケーなんです。

ほかにも白髪ネギを入れれば香りが立ち、アスパラを刻めば季節らしい感じが出ます。
枝豆ほうれん草を入れると彩りが美しく栄養バランスもアップ。ナスを軽く炒めて入れれば、トロッとした食感が楽しい変わり種天津にも。

もちろんニラを入れてもおいしい。ただそうなると料理名は「ニラ玉」寄りになってしまうかもしれませんね(笑)。

でもそれもまたご愛敬。天津という枠にとらわれず、「今日はこれ入れてみよう」と楽しめば、それでいいんです。

 

■ 鉄フライパンでおいしく焼くコツ

さて、肝心の焼き方です。
どのタイプの卵を作るにしても、最初のプロセスは同じ。

1. フライパンに油をいつもより少し多めに入れます。天津の場合、卵がふわっと広がるためには「油」が大切。鉄 フライパンは油なじみが良いので、この“多めの油”がちょうどよく働いてくれます。
2. 火にかけて、煙がうっすら出るくらいまで熱します。
 ここで焦らず、「一呼吸置く」こと。
 その一瞬の間にフライパンの温度が安定して、こびりつきを防いでくれます。
3. 溶き卵を一気に流し入れ、お箸でもヘラでも大きく混ぜて熱を均等化します。
4. その後に火加減調整です。

 
そしてポイントがもう一つ。
使う卵は、冷蔵庫から出してしばらく常温に戻しておくこと。
冷たいままだと、フライパンとの温度差が大きく下がりムラになりやすい。常温に戻しておくと、焼き始めから仕上がりまで驚くほどスムーズになります。

 

■ 鉄フライパンで焼く卵の栄養的メリット

鉄フライパンで卵や野菜を焼くと、実は栄養面でもメリットがあります。
文部科学省のデータによると、鉄製の調理器具を使うと微量ながら非ヘム鉄(Fe²⁺)が食品に溶け出すことが確認されています。
特に卵やネギ、アスパラなどのビタミンCを含む食材と組み合わせると、この鉄分の吸収率が高まることがわかっています。(※出典:日本食品標準成分表2020年版・厚生労働省「鉄分吸収に関する栄養指導資料」)

つまり、鉄フライパンで作る天津は、おいしくて栄養的にも理にかなっているというわけです。
さらに、卵に含まれるビオチンやビタミンB群は加熱によって吸収が良くなり、油と一緒に摂ることで脂溶性ビタミン(A・D・E)の吸収率もアップします。
「鉄フライパンで天津を焼く=体にもやさしい調理法」と言っても過言でもないかもしれません。

 

■ あんかけ、3つの“遊び方”

天津の楽しみといえば、やっぱり最後にかけるあんかけ。
この「あん」で、料理の印象がガラリと変わります。
ここでは3つのバリエーションを紹介します。

① 定番の甘酢あん
酢・砂糖・しょうゆ・鶏ガラスープを合わせた王道。
酸味と甘みのバランスでご飯が進みます。
隠し味に黒酢をほんの少し足しても面白いです。

② ごま香る中華風とろみあん
鶏がらスープに白ごまペーストを加え、香ばしい風味に。
仕上げにラー油をひとまわしすれば、ピリ辛の大人味。
かために焼いたタイプとの相性が抜群です。

③ 和風だしあん
だし汁にみりん・しょうゆ・少量の片栗粉。
あっさりした口当たりで、枝豆やナス入りの天津にぴったり。
寒い日にほっとする味わいになります。

あんは、気分や季節で変えていい。
「今日は黒酢で元気に」「明日はだしでやさしく」——
その日の自分に合う味を選ぶのが、天津を楽しむコツです。

 

■ 失敗を恐れず、鉄フライパンで

卵料理は焦げ付きやすいと思われがち。
でも、鉄フライパンで天津を焼くときに大切なのは「温度」。
そこをつかめば、もう失敗はほとんどありません。
そして一度うまく焼けたら、その感覚を応用するだけで、オムレツも卵焼きもどんどん上達していきます。
鉄の熱と油の香り、卵の膨らむ音。
その一瞬一瞬が、料理をもっと楽しくしてくれるんです。

 

 

■ まとめ

天津は、決してむずかしい料理ではありません。
卵の焼き方ひとつでも、香ばしさ、とろみ、ふんわり感。
具材だって、カニからカニカマ、アスパラ、枝豆、ナス、ニラまで、どれもそれぞれにおいしい。
そして、鉄フライパンで焼くことで、香りも、食感も、栄養もひと味上がる。
仕上げのあんは、甘酢・ごま・だし——気分で選べばいい。
“これじゃなきゃ”という正解はなく、
“今日の気分で作る天津”こそが、最高の天津です。
鉄フライパンの力でいつもの卵がごちそうに変わる。
次の休日、あなたのキッチンからも、あの「じゅ〜」という音を響かせてみませんか。

鉄フライパンで卵を焼く


2025年10月09日