鉄フライパンは食洗機で洗うことができるのか
鉄フライパンを日常的にお使いいただいている方や、これから使おうと検討されている方から、
「食器洗い乾燥機(いわゆる食洗機)で洗ってもいいんですか?」というご質問をよくいただきます。
私たち製造側としても、こういった疑問にきちんとお答えしたいと思い
今回は、この質問に正面からお応えしつつ、鉄フライパンにとって大切なお手入れについても、やさしくお伝えできたらと思います。
まず最初にお伝えしたいのは、鉄フライパンは基本的に食洗機には向いていないということです。
鉄という素材の特性上、高温の水や洗剤によって表面の保護膜(いわゆる油膜、シーズニング)が剥がれやすくなってしまうためです。
食洗機は非常に便利な家電ですが、その便利さがかえって鉄には厳しい環境になることがあります。
特に洗浄中に強いアルカリ性の洗剤が使われたり、乾燥の際に完全に水分が飛ばなかったりすると、鉄の表面がむき出しになり、そこから酸化が始まってサビが出てしまうことがあるのです。
それでも「最近の食洗機は性能もいいし、乾燥までしてくれるなら大丈夫じゃないの?」と思われるかもしれません。
たしかに、ステンレス製の調理器具や陶器類などでは問題ないケースも多いです。
ただし、鉄の場合は「洗剤で油膜が落ちた後に、水分が残っていたらサビる」という性質があります。
また、食洗機では汚れを水流で流す仕組みなので、焦げつきや油汚れのような“こすって落とす”必要がある汚れに関しては、どうしても落ちきらないまま残ってしまいます。
これは使ってみるとよく分かることかもしれませんが、鉄のフライパンは、洗うというより“こする”ことが必要な道具なんです

もうひとつ、大事なポイントがあります。
それはフライパンに木製のハンドルや取っ手が付いている場合です。
木は水を吸収します。特に食洗機の中で長時間高温のお湯にさらされその後乾燥されますのでこれが適していません。
反ったり、割れたり、場合によっては緩んだりすることもあります。
せっかくこだわって選んだ道具が早く傷んでしまうのは、私たちとしてもとても残念に思います。
ではどうすればいいのか。
答えはとてもシンプルで、「手で洗っていただく」のがいちばんです。
鉄のフライパンは、洗剤を使わずとも水またはぬるま湯とタワシだけで十分きれいになります。
使い終わったら、まだ温かいうちにサッと水を流しながら金属製のタワシで軽くこすればOK。
洗った後はすぐに水分を拭き取るなり、軽く火にかけて乾かしていただくと、サビの心配もぐっと減ります。
もしできるなら最後にほんの少し油をキッチンペーパーで薄く塗っておくといいかもと思いますが、先ほどの洗い方ならそこまで必要がないと思います
この様に使っていきますと道具がどんどん育っていくのが分かると思います。
この「育てる」という感覚は、鉄フライパンの大きな魅力のひとつです。
はじめは少し面倒に感じるかもしれません。
不思議なことに、何度も使っていくうちに、「あれ?洗うのって意外と気持ちいいな」と思う実感があり、しかもサビが出ない。
道具と心を通わせているような感覚が、そこにはあります。
もちろん、現代の暮らしの中で「すべて手洗いを」と言うのは難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも鉄のフライパンは、ほんの数分のケアで、長く付き合える道具になります。
私たちメーカーとしては、便利さと引き換えに失われてしまう価値があることも、少しだけ心に留めていただけたらうれしく思います。
「食洗機には使えません」と断言するのは、なるべく避けたい言い方ではありますが、大切な道具を長く大事に使っていただくためには、やはり“手洗いがいちばん安心”というのが正直な答えです。
決して強制ではありませんが、そうすることで、フライパンはより美味しく、よりあなたらしい料理を支えてくれる相棒になってくれるはずです。
どうかこれからも、鉄という素材の味わいとともに、長くご愛用いただけますように。
もしお手入れの中で困ったことがあれば、私たちがいつでもご相談をお受けいたします。
道具と人とが一緒に育つ。その楽しさを、ぜひ味わってみてください。